分子標的薬とは

作用の仕組み
アレルギー反応は、アレルゲンが体内に侵入すると、それを排除しようとIgE抗体が生成されます。このIgE抗体がマスト細胞と結合することで、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、かゆみなどのアレルギー症状が起こります。
アレルギー治療に用いられる分子標的薬には、オマリズマブだけでなく、メポリズマブ、デュピルマブ、ベンラリズマブなどがあります。これらはそれぞれ作用する物質に違いがありますが、アレルギー反応の過程で特定の物質の働きを抑制し、症状を緩和するという点は同じです。
オマリズマブは、既に現れている症状を改善するのではなく、事前に体内の環境を調整することでアレルゲンによる反応を抑える働きがあります。そのため、症状が現れている場合は、医師の指示を守って内服薬・点眼薬・点鼻薬などを使用してください。
治療について
当院では、次の条件に当てはまる方に向けてオマリズマブを使ったアレルギー治療を行っています。
重症花粉症と気管支喘息の必須条件
①~③の全てに該当することが条件となります。
- 12歳以上
- 体重が20~150㎏
- 血清中総IgE濃度が30~1500IU/ml(当院で血液検査を行います)
また、上記の必須条件だけでなく、各疾患によって次の全ての条件に該当することが必要です。
重症花粉症
- スギ花粉のアレルギー反応が起こっている方(クラス3以上)
- 今期中に季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の既存の治療を1週間以上受けたが、効果が乏しかった方
- 重症以上の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)で、前年のスギ花粉症の時期に重い症状が起こっていた方
気管支喘息
- ダニなどのアレルギー抗原に陽性反応を示した方
- 高用量吸入ステロイド薬だけでなく、その他の喘息治療薬を使っても喘息症状の改善が見られない、制御できない方
慢性蕁麻疹
- 12歳以上で、慢性蕁麻疹の症状があるが原因が分からず、これまで薬物療法を受けたが症状が改善しなかった方
分子標的薬はアレルギー疾患の症状を緩和する効果が期待できますが、いずれもこれまで受けた治療では改善しなかった重症の方を対象としています。これらの治療は健康保険適用で受けることができ、東京都にお住まいで子ども医療証をお持ちの場合は、自己負担なく受けることが可能です。受験を控えており、お薬を使うと眠気によって勉強に影響がある方や、お薬の量を減らしたい方にも推奨できます。
治療費用について
分子標的薬は比較的最近登場した治療で、アレルギー性鼻炎(花粉症)に対するオマリズマブ(ゾレア)の保険適用は2019年に開始されたばかりです。投与量によりお薬の費用は変動しますが、2019年11月時点では、1ヶ月に1回150mgの投与で自己負担3割の場合13,947円と、従来の治療よりも費用が高くなることが多かったです。しかし、2020年4月の薬価改定により、同条件で8,744円となり、費用負担が軽くなりました(投与量に応じて費用は変動します)。
効果を最大限に得るため複数回の接種が推奨されますが、重症の花粉症の場合、特に症状を抑えたい場面に合わせて1回のみ注射するという選択肢もあります。効果は1ヶ月程度続くため、鼻水やくしゃみを避けたい場面(重要な会議・面接・プレゼン・集中したい仕事の期間・受験勉強など)に合わせて、費用を抑えつつピンポイントで治療を行うことが可能です。
治療の流れ
オマリズマブ治療を始めるためには前述の条件に該当することが必要ですが、血液検査の検査値が低い場合は適応外となることが多いため、当院では以下の手順で治療を行います。
治療開始まで最短でも約3週間、4回(最低3回)の受診が必要となりますので、予めご了承ください。
1内服薬の服用
当院で処方した抗ヒスタミン薬などの内服薬を1週間以上服用して頂きます。
2分子標的薬の検討
再診時に重症以上の方で症状が改善していない場合、分子標的薬を使った治療を検討します。特異的IgE抗体検査や総IgE濃度検査などのアレルギー検査を行い、スギ花粉に対するアレルギー反応の有無を調べます。なお、別の医療機関で同じ検査を受けている方も、当院で再度検査を受けていただきますので、ご了承ください。
3結果説明

4初回投与
予約時間までにお越しください。体調を確認し、オマリズマブ(ゾレア)の準備をします。(冷蔵庫から出して15~30分置く必要があります)。投与後は体調変化を確認するために、院内で30分程度待機して頂きます。
※1ヶ月に1回(あるいは2回)受診して頂き、分子標的薬による治療と抗ヒスタミン薬を使った薬物療法を行います。なお、受診頂く回数は重症度などで異なります。